数多くの著書や論文を発表されている小川先生ですが、歯科医院のスタッフ向けの本を出されていたり、現在は神奈川歯科大学で客員教授を務められていたりと、その実績を生かして、現在は「教育・指導」の面においても尽力されていると思います。数々の著書・論文の中で、最も印象に残っているものとその理由をお教えください。
これまでたくさんの治療方法を論文で紹介してきました。
昔は「歯がなくなったらインプラントか入れ歯をしなくちゃいけない」というように、1つの症例に対して1つ(または2つ)の治療方法しかありませんでした。しかし、違う方法に取り組んでみたら患者さんにとってより優しい、いわゆる低侵襲の治療を提供することが可能になりました。
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小川 勝久・木本 克彦著
『前歯部欠損補綴のトリートメントデザイン』
デンタルダイヤモンド社 2014
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この中ではインプラントやブリッジはもちろん、「接着して貼り付ける治療法」などについても紹介しております。
「前歯を一本失ったらインプラント」ということは今も多くの先生が勧める治療法でもあると思いますが、この「接着」という方法はインプラントのように大きな手術の必要もなく、ブリッジのように隣の歯を削る必要もありません。
そしてインプラントよりも費用面で安く、だいたい4分の1程度になります。噛んだ時の噛み心地も自分の天然歯で受けることになる為、ほぼ変わりません。
しかし、欠点もあります。自分の歯で受けるということは3つ分の歯の噛み合わせを2つの歯で受けることになる為、その分の負荷がかかります。 また、「接着」なので、取れてしまうというリスクもあります。ただ、今は接着剤がよくなったので、かなりいい結果がでております。
このように、「インプラントの場合の治療」と「インプラント以外の場合の治療」でどのように違いがあるかということを発表しました。
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【単著論文】
インプラント治療でのCTの臨床的有効応用
クイントエッセンス デンタル インプラントロジー2007;14(4):47-56
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この中では治療前と治療後をしっかりとイメージして手術を行うということの重要性をまとめております。
また、そのためにはCTは欠かせない、というものです。
この中で紹介している治療がなぜうまくいったかと言うと、大学時代に総義歯が私の専門であったことが大きいと思います。大学の補綴科というのは歯を作るのもそうですが、義歯も作ります。義歯は口の中全体のことがわからないといけません。義歯が上手ではない人は全体を見ることができないからであるとよく学生にも教えております。
義歯の治療ができると、どこに歯がきたら綺麗に見えるか、しゃべりやすいか、食べやすいかというのがわかる為、歯科医師になってからとても応用が利いた経験であったと感じます。
特に患者さんにも見てもらいたいですね。